第5回 不況と好況時に注目されるベンチャービジネス



米国の駐インド大使でもあった著名な経済学者であるガルブレイス は、「景気の循環周期は、世間(人々)が時代の破綻を忘れるのに 要する時間とほぼ一致する」と説いています。戦後50年が経ち、 混乱期に生まれた神話的なベンチャー企業の精神が忘れられ、イノ ベーション(革新)を避け、目先の安定を求めた結果が、現在の長 期不況を導いたのです。産業構造とともに、世界情勢も激変してい る今、大きな変革なくして抜本的な経済再建は有り得ないでしょう。 その変革をもたらす企業こそベンチャー企業なのです。

戦後の混乱期以降も経営システムや産業構造の改革が叫ばれる度に ベンチャービジネスの必要性が取り上げられてきました。ベンチャー 企業という言葉自体、新しくはなく、1970年初頭には使われて いたようです。大阪で開かれたアジアで初めての国際万国博覧会に 代表されるように、1970年前後の科学技術創生期であり、国内の 産業構造の転換、つまり鉄鋼等の素材産業から自動車、電機製品 への転換を迫られていた時期には、その基礎技術を支えるために ハイテクベンチャーの必要性が重要視されました。アメリカでは この頃、小型コンピュータを扱うDECというベンチャー企業が 大躍進し、当時、コンピュータの分野で世界第2位の規模の会社 になり注目されました。そのDECも今ではコンパックという パソコン会社に買収されています。しかしながらこの時期に設立さ れたハイテク志向の企業の多くは、1973年のオイルショックで 挫折しました。これらの会社はその設立の経緯、意識から言って、 ベンチャー企業とは呼べないかも知れませんが、中核になるハイテク 技術開発を大企業ではなく中小企業に担わせた点で大きく評価できます。 実際にブームと言えるほど、ベンチャー企業の設立が盛んになった のは1970年代の後半です。2度に渡るオイルショックで大企業 が苦境に立たされる中、その隙間をぬってベンチャー企業が生まれて きました。セブンーイレブン、セシール、パソナ等の流通系の ベンチャー企業です。

1980年代に入ると、円高が進み、一時の円高不況から、逆に 円高好況となり、この間にやはり大企業の隙間をぬって、数多くの ベンチャー企業が生まれています。徳島のジャストシステムも この時期に合わせて躍進を遂げました。しかしやがてバブルの時代 になって、多くのベンチャー企業が自分を見失い、バブルの崩壊と ともに消えていきました。バブル景気に踊り、ベンチャー精神を 忘れたゆえの当然の結果と言えます。しかしソフトバンク、HIS、 徳島とも関係の深いスクエアのように、時代に合わせながら、生き 残っている企業も少なくなく、このような企業が実質的に現在の 日本経済を支えていると言えなくはありません。