森井教授のインターネット講座 最新版(2000年5月28日掲載記事)



第143回 ウイルスメール(下)


解説イメージ

「ラブレターウイルス」は、その感染力の強さから世界中を震撼させ ました。発生から半日足らずで世界中に蔓延し、4500万台以上 のコンピューターが感染、被害総額は1兆円以上という報告もされて います。そのウイルスの作成者については、フィリピンのコンピュ ーター専門学校の学生であろうという記事も見かけられます。では、 そのウイルスですが、作成するのは難しいのでしょうか。実は決して 難しくはないのです。例えば徳島大学の知能情報工学科の学生である ならば、ほんの少しの予備知識を得る程度で、「ラブレターウイルス」 相当のウイルスを作ることは可能です。また逆に、コンピューターの 専門家の卵として、その程度のプログラム(ウイルス)は出来なけれ ば困るのです。

例えば、不要なファイルを消したり、必要なファイルを作ったり、書 き換えたりというコンピューターの設定を自動的に行うプログラムは 非常に有用です。特にそのプログラムを設定が出来ないような初心者 にメールで送ることができ、そのプログラムを実行するだけですべて の設定が終わってしまえば、面倒なインストールという操作も非常に 楽になります。実際、最近のツール(プログラム)はセットアップと 言って、インストール作業を自動で行ってくれます。この便利なプロ グラムもでたらめな設定を行うようになっていれば有害なプログラム です。そしてこのプログラムが自動的に適当なアドレスに向けて送ら れるようになっていれば、「ウイルス」と呼ばれます。有益なプログ ラムとウイルスは紙一重の違いなのです。1988年にアメリカで「 インターネットワーム」という一種のウイルスが問題になりました。 それはインターネットを伝って、次々とコンピューターを渡り歩き、 自分自身、つまりプログラムのコピーを植え付けていくと言うもので す。これは学生が研究で作ったプログラムが不注意に研究室を出てし まった結果、世界中に伝染したのです。大騒ぎとなったこの「ワーム (虫)」は現在、コンピューターを自動的に渡り歩いて、不具合を 検出、修理してくれるプログラムと姿を変えて、大いに役に立っていま す。

「ラブレターウイルス」はさらに改良されて、より多くの人に蔓延す るようになり、そのメールの題目も次々と変わるようになっているよ うです。誰でもがウイルスを作ることができ、インターネットはそれ を世界中に拡散させることができるのです。実際の社会と同様、ネット ワークでのルール、倫理感を教えるとともに、常に「安全」と「危険」 を意識することが必要です。インターネットが従来の通信を含めて、 他の社会と大きく異なる点は、「自己責任の必要性」なのです。


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