最近、見かけなくなったものの一つに「デモ」があります。今では 「デモ」と言えば、機械やシステム、コンピュータのソフトウエア を実際に動かして紹介することになっています。しかし、昔はデモ と言えば、大勢の人が抗議の意思を示して、行進することを指して ました。記憶に新しいところでは、小泉首相の靖国神社参拝問題や いわゆる教科書問題によるアジア諸国でのデモがニュースでよく取 り上げられていました。現実社会での行動や事象はネットワーク社 会でも行われ、時に大きな問題になります。その一つがサイバーテ ロでした。現実社会においてテロとは、もともと恐怖を指し、暴力 に訴えて、敵対する相手を威嚇することであり、特に無関係な人を も巻き込んで、破壊や殺傷を行う傾向にあります。サイバーテロと は、ネットワーク上でのサービス、特に人命や生活に関わるサービ スに対する妨害や停止です。例えば、自治体等での個人情報はコン ピューター上でのデータベース化がなされており、そのデータが漏 えいすることによって、個人の生活が大きく脅かされます。もし、 書き換えられるようなことがあれば、社会的に抹殺される恐れもあ るのです。数年前に、電気通信事業を行っている会社での事故が西 日本の社会機能を麻痺させてしまいました。関西空港の通信機能が ダウンし、航空機の発着ができなくなり、銀行の現金自動支払機も 機能しなくなり、鉄道の切符の発券や座席予約もできなくなりまし た。さらに警察や消防への通信もできなくなったのです。インター ネットに代表されるコンピューターネットワークを用いて、このよ うな事故が故意に起こされないとは限らないのです。国、特に警察 が「ネットワークセキュリティ」に対して非常に神経質になってい る理由がここにあるのです。さらには最近、「サイバーデモ」の問 題も表面化しています。通常のデモも秩序を逸脱すれば、暴動に発 展します。サイバーデモもサイバーテロになる可能性があるのです。 サイバーデモとは、特定の機関のホームページに多くの動員をかけ て、一度にアクセスする行為です。動員が多ければ、そのホームペ ージにアクセスすることが困難になり、本来のサービスが出来なく なります。不正アクセスの一つとして分散型DoS(アクセス拒否) 攻撃というものがあります。これはインターネットにつながる数多 くのコンピューターに不正なプログラムを忍び込ませて、そのプロ グラムが実行されると、攻撃対象のコンピューターへ向けて、同時 刻、一斉にアクセスする攻撃です。このようにするとそのコンピュ ーターは処理能力を超えたアクセスを受けることになり、混乱して 動かなくなってしまいます。サイバーデモは多数のコンピューター に不正なプログラムを仕込ませるかわりに、意思を持った多数の人 間が、対象となる機関のネットワークサービスを妨害することなの です。これはデモではなく、不正アクセスとなります。