森井教授のインターネット講座 最新版(2003年6月2日掲載記事)



第234回 テンペスト


解説イメージ

テレビや新聞、雑誌で白い装束をまとった集団の話題が一頃、よく 取り上げられていました。彼らの主張の一つが、有害な電磁波から 身を守るということでした。確かに強力な電磁波は人体に悪影響を 及ぼすことはよく知られた事実です。しかし微弱な電磁波は無害で あることも知られているのです。電磁波は放射線と同様に、人工的 なものだけではありません。自然界にも存在するのです。微弱の程 度にもよるのですが、地球上の生命は、そのすべてが電磁波にさら されて誕生したと言ってよいでしょう。さらに突き詰めれば人体か らもごく微弱な電磁波が出ているのです。すべての電磁波が悪いわ けではなく、その強弱の程度の問題なのです。ちなみに白い布が電 磁波を遮るか否かという問題ですが、電磁波が透過する程度は、色 の違いによって変化はありません。光と電磁波を混同しているので しょう。

人工的な電磁波は意識されずとも、電気を一般的に扱いだした19世 紀から、そして電磁波(電波)としての性質を利用し出した19世紀 末の無線通信から、現在では生活に必要なもの(現象)のひとつと なりました。電気を扱うところには、かならず電磁波が生ずること から、人工的な電磁波に囲まれて人は生活していることになります。 携帯電話だけでなく、もちろん電波を扱うテレビをはじめとして、 冷蔵庫やビデオといった、ありとあらゆる電化製品が電磁波を多か れ少なかれ発生させているのです。

パソコンも、そのディスプレイ(画面)も電磁波を出しています。 微弱な電磁波ですが、人によっては、一日中パソコンと向かい合う 仕事もあり、毎日、しかも何年にもわたって、電磁波を浴びること なることから、人体に影響がないとはいえない場合もあります。数 時間おきにパソコンから離れる、さらにその電磁波を遮断する仕組 みを取り入れることが推奨されています。パソコンの電磁波で、も う一つの問題が、情報の露呈です。パソコンには他人、あるいは会社 外に漏れてはいけない秘密の情報が入っています。これがパソコン の電磁波を利用して盗み出される可能性があるのです。パソコンの 画面に情報を映すためには、ケーブルを通じて、電気信号をディス プレイに送り、表示させます。その電気信号から電磁波が生成され て、それが漏れてしまうのです。特別な装置を使えば、100m近 く離れたところから、その電磁波を抜き取り、画面を再構成させて、 盗み見ることが可能です。これは、ある国の諜報機関において、「 テンペスト」というコードネームで呼ばれている技術です。電子政 府が実現されていく現在、役所等で個人情報が扱われ、その保護対 策が問題となっています。いわゆるセキュリティという言葉で総称 されてますが、パソコンを扱う部屋の外へ漏れる極く微小な電磁波 への対策も必要となってきています。


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