森井教授のインターネット講座 最新版(2000年7月1日掲載記事)



第145回 続・インターネット銀行


解説イメージ

銀行業務の本質は「お金」という情報のやりとりを仲介するサービ スです。個人を対象にした場合、それは主に預金とその引出し、お よび自動振込みや引き落としです。現在、個人が銀行に出向く理由 は、「物」としてのお金を受け取る必要があるからです。つまり、 紙幣や硬貨に交換するすることによって、その価値を発揮するわけ です。しかし、紙幣や硬貨が必ずしも必要でない世の中になりつつ あります。「お金」という「物」を手にしない時代になりつつある のです。クレジットカードによる決済(支払い)はかなり広まって いますが、数百円から数千円程度の買い物をするような店ではほと んど使えません。消費者に対して手数料はかかりませんが、店側に は5%前後の手数料がクレジットカード会社に支払われるからです。 今年になってデビットカードというサービスが始まりました。銀行 のキャッシュカードを店側に提示すれば、銀行口座から直接、代金 が引き落とされるというサービスです。まだまだサービス可能な店 舗は少ないですが、今後増えていくでしょう。そして注目されている のが、携帯電話を利用した決済です。実現は数年後以降になると考 えられます。銀行口座に入っている「お金」を、携帯電話を使って 店側の口座に払い込むのです。現在の携帯電話は、単なる無線電話 機能を持っているだけでなく、データを送受信できる高い機能を有 する「携帯情報端末」となっています。商品を購入する場合、店の 口座番号と金額を携帯電話に入力して、自分の口座から店の口座に 振り込むのです。店も即座に携帯電話を用いて振込みの有無を確認 します。デビットカードの場合、普及の問題点は、カードの偽造問 題と店側の決済端末の設置です。特に店側の端末の設置は、経営的 にも負担になります。携帯電話なら偽造は困難ですし、何より、今 では、ほとんどの人が持っています。

現在、「お金」という情報を、「物」である紙幣や硬貨を媒体にし て受け渡しを行っていますが、双方に携帯電話があれば「お金」と いう情報を、通信データとして受け渡しを行うことができるのです。 「お金」が「物」である必要がなくなり、したがって、その「物」 を受け取りに銀行に出向く必要がなくなるのです。ATM(現金自動 支払機)が銀行や公共の場にある主たる理由は、その中に入ってい る紙幣や硬貨の管理です。紙幣や硬貨を使う必要がなくなれば、 ATMは、その利用者の確認(認証)ができれば、どこにあっても良い ことになります。そのATMが自宅のコンピュータや携帯電話に移った 銀行をインターネット銀行と呼ぶのです。


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