森井教授のインターネット講座 最新版(2000年7月29日掲載記事)



第148回 地上波ディジタル放送


解説イメージ

先日、朝のテレビ番組で「IT革命」について半時間ほど解説を致し ました。そのまとめとして「ITとは無駄を省くこと」と結論付け、 新たに生まれた時間や資源が新しい社会活動を引き起こすとしまし た。ディジタルと言う方式も、必要な情報だけを取り扱うという考え 方です。無駄な情報を省くことによって、機械には扱いが簡単にな るのです。

そのテレビ番組を流した放送局もディジタル化を迫られてます。衛星 を使った新しいディジタル放送が始まるだけでなく、以前からある普 通の放送局も2003年以降、デジタル化されることが決まってい ます。いわゆる「地上波ディジタル放送」と呼ばれるものです。では、 今のテレビ放送をどうしてデジタル化する必要があるのでしょう。 ディジタル化すると普通のテレビでは見れなくなり、ディジタル放送 対応のテレビを買うか、もしくは現在のテレビで見れるようにする特 別な装置を購入する必要があるのです。それでもディジタル化する理 由は、「周波数の有効利用」という目的があるのです。

放送や無線通信では、一般に情報を電波に載せて送ります。電波は 一つではなく、いくつもの電波を同時に出して、それをひとつひとつ 別々に受けることができます。テレビで言えば、チャンネルに相当 します。同時にいくつものチャンネルが電波を出しているのですが、 チャンネルを指定すれば、テレビは一つだけ、そのチャンネルの電波 を受け取ることができるのです。このチャンネルに一つの周波数が 割り振られているのです。どのチャンネルにどの周波数を割り振るか ということも決められています。さらにテレビに使用できる周波数も 決められているのです。テレビだけでなく無線や放送に使用できる 周波数は用途毎に決められいます。実はこの周波数が足りなくなって きているのです。周波数というのは、空間を伝わる電気の波で、1秒 間にいくつの波があるかという数値です。例えばラジオ放送の12 19KHz(キロヘルツ)と言えば、1秒間に120万回以上の電気の 波が伝わっているのです。現在の技術で無線や放送に使用できる周波 数というのは、数百Hz(ヘルツ)から数十GHz(ギガヘルツ)です。 この中にすべての無線通信や放送の電波が割り振られています。今、 新しい無線通信の要求が出てきています。その代表格が携帯電話です。 多くの人が同時に携帯電話を利用できるようになるためには、多くの 周波数が必要になってくるのです。携帯電話だけでなく、いろいろな 場所で無線通信を使う場面が増えています。しかし利用できる周波数 は、もうほとんどないのです。同じ周波数でも必要な情報を多く載せ られるディジタル放送に移行することは周波数の無駄使いを省こうと 言うねらいもあるのです。最後にディジタル放送に移行する一般のテ レビですが、移行後、10年間ほどはアナログ放送も同時に行う予定で す。


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