森井教授のインターネット講座 最新版(2000年8月5日掲載記事)



第149回 ビジネスモデル特許


解説イメージ

日本でも、購入を希望するものが値段を付けて、最も高い値を付け た人が競り落とす、いわゆるオークションサイトが話題になってい ます。インターネットのオークションでは、誰でもが身近な品を競 売に出せるということが魅力です。最近、アメリカ大手の逆オーク ションサイトが日本に進出するという発表がありました。逆オーク ションとは、購入者が値付けをするのではなく、販売者が値付けを するのです。例えば、購入者が逆オークションサイトに、こういう 色、形式の自転車が最低、いくらの値段でほしいと要求を出します。 それ見て、販売者が値段を付けるのです。オークションとは逆で最 低の値段を付けた人が落札します。公共事業などで行なう入札の個 人版という位置付けができるでしょう。

この逆オークションのシステムですが、アメリカではビジネスモデ ル特許として1997年から認められています。したがってアメリカで は、同様の逆オークションサイトを開くことは、特許権の侵害にな り、許可なく行うことはできません。一般に、新しいビジネスの方 法自体を特許とすることはビジネスモデル特許と呼ばれます。特許 とは従来、発明としての新しい「もの」、あるいはそれを作る方法 に対して適用されてきました。20世紀後半の産業革命の集大成の 時代になってから、後発の企業等が、類似の製品を大量に生産でき るようになりました。最初に開発した企業、個人の開発に要した資 金を回収しないうちに、他社等に売り上げを奪われる可能性が大き くなってきたのです。このことは、発明や新規開発を行なおうとす る者の意欲を削ぐ結果となりかねません。この対策として特許によ る知的所有権の保護が行われてきました。

世界的な情報通信の時代、特にインターネットの時代になって、優 れた製品を開発、生産するという企業活動以上に、「情報」をやり とりする企業活動が盛んになりつつあります。広く解釈すれば、そ のような企業は以前から多くありました。流通業やマスコミに関係 する業界等です。これらの業界の新規事業を後発の企業が行おうと すると相当の困難が伴い、容易に実現できないのが通常でした。し かし現在のインターネットを利用した「情報サービス」は、その方 法さえ分かれば、誰でも実現することが可能です。このインターネ ット上での新しい「情報サービス」に対しての知的所有権の保護が 「ビジネスモデル特許」なのです。


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