森井教授のインターネット講座 最新版(2000年8月12日掲載記事)



第150回 続・ビジネスモデル特許


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前回、ビジネスモデル特許の目的をインターネット上での新しい「 情報サービス」に対しての知的所有権の保護としました。では、特 許とはどのようなものでしょうか。特許は特許法という法律で規定 されており、その第一条に「この法律は発明の保護および利用を図 ることにより、発明を奨励し、もって産業の発達に寄与することを 目的とする」と書かれています。つまり、特許とは発明の保護と、 発明による産業振興が目的なのです。発明とは何でしょうか。これ も特許法に規定されていて、「自然法則を利用した技術的思考の創 作のうち高度なもの」と書かれています。斬新なアイデアであって も、すべて特許になるとは限らないのです。まず技術的な要素が必 要です。例えば、商売をする方法だけでは一般に特許にはなりませ ん。その方法に技術的な要素が入らなければならないのです。例え ば、新たなコンピューターの利用方法は技術的な要素です。さらに 高度である必要があります。ここでの高度の意味は、専門の者が簡 単には思いつかないということです。

ビジネスモデル特許で保護されるのは、ビジネスの方法であり、そ のサービスそのものなのですが、新規性があるというだけでは特許 になりません。しかし、それを実現するためにコンピューターやイ ンターネットを利用し、その利用方法自体に新規性があれば特許と 成り得る可能性が出てくるのです。

ビジネスモデル特許にも大きな問題点があります。一つは特許が各 国毎に認められるという点です。インターネットに関係するビジネ スモデル特許では、その利用に当たって、国と言う枠を超えて利用 されることが考えられます。アメリカで認められた特許でも、日本 では認められていないことも多々あります。しかし日本国内だけで サービスしていれば問題はないのですが、アメリカからの利用や、 アメリカを経由しての利用があった場合は特許の侵害になり得るの です。しかもそのような利用を完全に防ぐことは非常に難しいので す。さらに一つは特許が保護すべき内容です。非常に広い内容を含 んだ特許であれば、それに関係する多くのビジネスが特許権の侵害 に当たるかもしれません。例えば、日本国内でも「マピオン特許」 と呼ばれるビジネスモデル特許があります。これはユーザは地図上 の建物などをクリックすると、それに関係した広告を表示するとい う方法の特許です。しかし、この特許を拡大解釈すれば、地図を使 う情報サービスはほとんどすべて、この特許に関係することになり ます。つまり地図を使うという根本的な方法がインターネットでは 使えなくなる可能性が出てくるのです。これでは、特許の本来の目 的である産業振興に背く結果となりえるのです。


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