森井教授のインターネット講座 最新版(2000年10月07日掲載記事)



第153回 インターネット時代のプライバシー


解説イメージ

国勢調査におけるプライバシーの問題がクローズアップされていま す。徳島で、調査員が厳封された国勢調査の用紙を無断で開封し、 記入事項を確認したというものです。また、今回の国勢調査の用紙 には、シールを用いて閉じることができるようになっています。そ のシールを配布しなかった調査員も少なからずいるということです。 調査員の方々のプライバシー意識が欠落していたということでしょ う。個人のプライバシーが声高々に言われるようになったのはさほ ど昔からではありません。以前は世間一般としてプライバシー意識 が低かったのです。プライバシー意識が低かった理由は個人の活動 範囲にあります。昔は、個人の活動範囲が狭く、言わば毎日がほぼ 同じ人たちとの付き合いで終わっていました。つまり小さな集団の 中で生活が閉じていたわけであり、プライバシーを制御できたので す。すなわち、自分のプライバシーを知る人が活動できる範囲とい うものは、十分予想でき、見張ることもできたわけです。現代では、 個人の活動範囲が広い上に、転居転入も一つの町の中で見れば数が 少なくはなくなりました。もはや個人がプライバシーを制御できる 範囲を超えているのです。プライバシーは漏れること事態が恐ろし いのではなく、それが悪用される可能性が高くなったを危惧してい るのです。だからこそ、積極的にプライバシーを守る必要があるの です。

地方と都市との文化的差異の根本的原因は人の過密度と移動の頻繁 さです。インターネットは「都市」の典型です。特に、人の移動に 対応するインターネットを伝わる情報の速度や検索の速度は限りな く大きく、その結果として過密度は無限大に近いといえるかもしれ ません。つまり、インターネットでは、個人はいつも不特定多数の 人に覗かれていることになるのです。それゆえプライバシーには注 意しなければなりません。悪用される可能性が高くなるからです。 インターネットのプライバシーとは何でしょうか。電話番号や住所 等を掲示板やチャットで公表することを避けるようにといわれます。 これは電話番号や住所等の情報を使って詐欺やいたずらがインター ネット上は比較的容易に行われるからです。このような明らかなプ ライバシーではなく、個人が無意識のうちに、予期しない相手にプ ライバシー情報を与えている場合があります。例えば、ホームペー ジ(HP)の閲覧です。HPにアクセスするということは、美術館を見 学することと同じです。しかしその美術館は、いつ、どこを、どれ だけ見たか、ということがわかる仕組みになっているのです。HPに は足跡が残るのです。つまり、個人のインターネット上での行動パ ターンがある程度わかることになるのです。実社会において、尾行 され、その行動を逐一記録されていることと同じです。このことを 肝に銘じておく必要があります。誰が見ているのかということの特 定は難しいのですが、不可能でない場合も有ります。プロバイダや 電子商取引などの個人を認証して使うホームページなどは完全に個 人を特定できます。これらの機関は、プライバシーの流出には万全 を期す必要があるとともに、そのプライバシーに関わる情報の利用 方法については十分注意しなければなりません。現在、政府のIT戦 略本部では、個人情報保護基本法制について議論されています。


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