森井教授のインターネット講座 最新版(2000年10月21日掲載記事)



第155回 IPバージョン6


解説イメージ

先日、政府は11兆円におよぶ経済対策として、「日本新生のため の新発展政策」を決定しました。その中心としてIT革命の推進をは かるIT国家戦略、別称「E−ジャパン構想」を打ち立てています。 森首相が提唱する新生日本プランの核となるものです。森首相は特 に先の臨時国会での所信表明演説において、「IT」という言葉を2 4回も多用し、その決意を力説しました。ところで、その所信表明 演説の中で、「IPバージョン6」という言葉が飛び出し、話題になり ました。不適切な言い回しや誤用という理由で話題になったのでは なく、その言葉の必然性が話題になったのです。大学等で、「イン ターネット技術」の講義を受けた場合、その言葉の意味を学びます が、ネットワーク技術者でなければ耳にしない技術用語です。大抵 の人は何のことか理解できなかったと思います。

「IPバージョン6」とは、簡単に言うと、インターネットのデータを 送る新しい方式で、現在の方式を大幅に改良したものです。では、 改良してどのように変わるのでしょうか。現在のIPバージョン4に比 べて、主に実時間性、セキュリティ、そして規模拡張性等が優れて います。実時間性とは、例えばインターネットを用いて動画での生 中継をする場合の機能です。現在使われているインターネットでは 当初、動画をリアルタイムで送ることなど考えていなかったのです。 ところがインターネットの周辺技術が発達し、動画を送ることが要 求されるようになりました。現在のインターネットを改良しながら 対応していましたが、限界が近づき、大幅な変更が必要になってき たのです。IPバージョン6では、セキュリティも考慮しています。 データの暗号化や誰が送ったデータかを判別する認証と呼ばれる機 能が付いているのです。現在のインターネットでも同等のことが可 能です。しかし、電子メールにしても自動的には暗号化してはもら えず、別に暗号のソフトウエアを動かさなくてはなりません。最後 に規模拡張性です。これがIPバージョン6の代名詞となっている感が あります。すなわち、現在のインターネットでは、IPアドレスとい う、言わばインターネットの上で一人一人を識別する名前が足らな くなってきているのです。www.asahi.comはドメイン名と言って、人 間が扱いやすいように付けた名前で、機械は192.168.201.34といっ た数字で識別しています。この数字が足らなくなっているのです。 IPバージョン6では、この数字の組み合わせが数多くあるのです。人 間が利用する地球上のすべてのものにIPアドレスを割り当てること ができ、実際、その計画が練られています。自動車や冷蔵庫、それ にペットの犬とまでインターネットを用いて通信できる日も近いで しょう。


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