森井教授のインターネット講座 最新版(2000年11月18日掲載記事)



第158回 IT講習会


解説イメージ

国民のIT(情報技術)に対する習熟度の向上と個人間のデジタルデ バイド(情報格差)の解消を目指して、全国規模でIT講習会が開か れようとしています。その実施に関しては各自治体に委託する形に なるようです。しかし、実施主体である自治体には、効果を含めて 不安があるようです。

まず実施方法です。講習が可能なパソコンを備えた部屋が必要です。 建物自体は公民館や学校等を利用すれば良いでしょう。学校等では 既にパソコンやインターネットを利用できる設備が整っていますが、 これを機会に公民館や公共施設等のIT化、すなわちパソコンやネッ トワークの設備を整えることが肝要であると考えます。講師の問題 もあります。地方では必ずしもパソコンやインターネットについて 教えられる人材は多くはないと考えられがちです。しかし個人とし て習熟した技術を持つ人もいるはずですし、仕事で利用している会 社関係の人も少なくないでしょう。これらの人に「ボランティア」 として、社会貢献してもらうのはどうでしょうか。求められている 能力のほんの少しを、求めている人達に提供するという本来のボラ ンティアの精神に適うものだと思います。また、大学と言う、高等 教育機関であるとともに地方への文化的な社会貢献の中枢となる機 関が存在します。その大学には学生や大学院生といった十分、パソ コンやインターネットの利用能力を有する人材が豊富に存在してい ます。さらにその人材のほとんどは地元出身であり、少なからず出 身地への貢献を意識していることでしょう。彼らにボランティアと して依頼するのです。これこそ大学生としての一つの能力を発揮す る場となり、社会的な接点を持つことによって、「学習」や「研究」 に対する新たな礎、そして意欲の一つになることでしょう。

次に最も肝心なことである実施内容です。まず、パソコンやインタ ーネットを教えると言う発想だけでは効果を得ることは期待できな いでしょう。IT技術の本質は「道具」です。道具とは目的に利用さ れるものです。道具自体の開発や研究を行おうとするものには、そ の道具の説明は必要でしょう。しかし一般の人にとって、道具やそ の一般的な使い方を教えても身につかないでしょう。目的があって こその道具なのです。多くの人にとってパソコンやインターネット が目的ではないはずです。個人のデジタルデバイドとして懸念され ている高齢者に対しての講習であればなおさらでしょう。高齢者の 方は一般にパソコンやインターネットに対しては必ずしも好感を抱 いていないと思われます。しかし、例えば囲碁や将棋を遠く離れた 人と行ったり、俳句や和歌を披露して批評しあったり、互いの趣味 に対して意見を交換したりすることには興味を持っている人も多い はずです。パソコンやインターネットという道具を使えばそれが可 能になるのです。目的を持てばその目的を実行するために少しの障 害ぐらいは乗り越えようとするものです。道具を使うことが目的で ないことを認識したうえでIT講習会の実施を望みます。


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