森井教授のインターネット講座 最新版(2000年2月3日掲載記事)



第164回 フィルタリングソフト


解説イメージ

国をあげてのIT政策は教育にも大きな影響を及ぼしています。小中 学校ではパソコンやインターネットの使い方が授業の中で取り入れ られ、平成15年度から高等学校では「情報」という教科が必須に なります。全国各地の小中高校では、パソコンやインターネットが 急激な勢いで敷設されつつあります。学校での先生方が一番不安な ことは、それらの教育方法です。しかし間近に迫っているのは、生 徒にインターネットを自由に利用させた際の、いわゆる「有害サイ ト」へのアクセス問題です。有害サイトとは、たとえば成人向けの ポルノサイトや、誹謗中傷、差別表現等の記述が多い掲示板サイト などです。

有害サイトへのアクセスを制限する方法として、「フィルタリング ソフト」を導入することが考えられ、実際に導入している学校も多 いようです。フィルタリングソフトとは、あらかじめアクセスを禁 止するサイトのURL(ホームページのアドレスに相当)を登録してお き、生徒がアクセスしようとすると、直ちに警告を出して、アクセ スを遮断するものです。有害サイトの登録は学校の先生方が登録す ることもできますが、日々、新しい有害サイトが数多く作られてい ますので、すべてを登録することはすることは不可能です。そこで フィルタリングソフトは、日々莫大な数で増え続ける有害サイトに 対応できるために工夫がされています。一つの工夫は、フィルタリ ングサーバを介してアクセスする方法です。ソフトを開発した会社 等で、サーバを立ち上げておき、そのサーバが集中的に有害サイト のリストを管理し、そのリストを常に参照する方法です。一般には、 プロキシー(代理)サイトと呼ばれ、そのプロキシーサーバが門番 の役割をして、アクセスできるか否かを判断する方法です。もう一 つの工夫は、生徒が有害サイトにアクセスしようとすると、先回り してアクセスし、その内容を吟味して、有害サイトである確率が高い ようだと、生徒が見る前にアクセスを遮断してしまう方法です。基 本的には、有害サイトに特有な単語や文脈を登録しておき、その出 現頻度等で、有害サイトであるか否かを判定する方式です。簡単に いうと、「裸」だとか「殺人」だとかいう単語の頻度を調べて、頻 繁に出現するようだと有害サイトと見なす方法です。

結論から言うとフィルタリングソフトは完全ではありません。すべ ての有害サイトを排除できるわけではないのです。偶然、有害サイト にたどり着く可能性もないとは言えません。やはり生徒には最初から インターネットには有害サイトがあることを認めさせ、その上でアク セスすることの是非を説くべきなのです。また、ネットワークの世界 では、現実社会と異なって、常に監視されていることも理解させるべ きです。有害サイトにアクセスすれば、通常、学校のサーバに誰がい つアクセスしたかという記録が常に残るのです。

フィルタリングソフトではなく、学校のサーバにあらかじめアクセス を許可するホームページを取り込んでおき、そのホームページだけに アクセスを許可するという方法が考えられています。しかし、これは 本末転倒であり、もはやインターネットではなくなってしまい、ネッ トワーク社会の上での創造性を剥いでしまう結果になるでしょう。

フィルタリングソフトは動物園のようなものです。有害サイトである 危険な動物を檻のなかに閉じ込めて、人間が自由に観察する方法です。 対して、アクセスできるホームページを制限するのは、動物を放し飼 いにして、人間を檻の中に入れ、守るようなものです。どちらも薦め られませんが、どちらかの選択ということになれば自ずから明らかで しょう。


前回掲載記事はこちら
次回掲載記事はこちら

森井教授のインターネット講座ホームページ