この原稿は富山市で書いています。今日は富山県のネットワークや 情報処理関係の事業を行う第三セクターである(株)富山県総合情 報センターに伺っておりました。そこで富山県のIT講習会について 説明を受け、富山大学工学部学生等のボランティアによって運営さ れようとしていることを聞きました。富山でもどの地域のIT講習会 も好評であり、限られた人数であるゆえ、応募にもれた人たちの開 催希望が絶えないそうです。主に50代の以上の自営業、主婦等の 希望が多く、今までパソコンやインターネットに縁がなく、ITに取 り残されたという意識がある人の応募が多いようです。また量販電 気店ではパソコンの売上が顕著に伸びているそうです。IT講習会で 研修を受けた人が、そこで使ったパソコンと同じものを求めて量販 店に押し寄せるのだそうです。地元のプロバイダー(インターネッ ト接続業者)への接続やパソコン関連製品、パソコン関係の書籍の 売上も伸び、少なからず地域経済の活性化に役立っているようです。
しかしこのIT講習会は毎年行われるわけではなく、国の今年度予算 限りの処置となっています。IT講習会は地域商品券同様、一時期の カンフル剤にしか過ぎないのです。では、この単年度事業であるIT 講習会には小さな景気刺激と市民の知的好奇心を幾分満たすだけで 終わるのでしょうか。この回答は各自治体のIT講習会後の対応次第 でしょう。IT講習会は市民への啓蒙、教育という観点から見ただけ でも、入り口にしか過ぎません。IT講習会では高々10時間程度の 講習であり、パソコンやインターネットに触れさせるというレベル でしか過ぎないのです。真の目的は意識改革です。IT講習を受けた 人の中から、さらに興味を持ってさまざまな活動にITを結び付け、 利用していくことが肝要なのです。その活動とはビジネスであった り、ボランティアであったり、さらに自分の趣味であったりするわ けです。それぞれがITを利用することによって、大きく新たな展開 を迎える可能性が出てくるのです。このITに目覚めた意識を受け入 れる場所が地方では必要になってきます。大都市圏ではさまざまな サービスを安価に受けられる環境が整っており、次の一歩を踏み出 すための情報も豊富です。徳島ではまだまだインフラ整備さえも遅 れている状況です。インフラとは、ビジネス利用も含めて、望まれ ている速度のインターネットを、手頃な料金で使えるという環境で す。当初、インターネットは地域間格差をなくすと言われました。 しかし実際には格差が広がっているのです。都内では格安の料金で 常時インターネット接続が可能となりつつありますが、徳島では高 い料金を払わなければなりません。また行政の努力でインフラが整 備されたとしても、IT講習で動機付けされた人たちを導く制度や機 関が必要です。徳島県でも「人を育てる」という視点に立って、情 報ボランティアの育成や企業内の研修制度の助成を行っていますが、 さらに広く具体的な施策を望みます。つまり、IT講習会後の「場」 を必要としているのです。