森井教授のインターネット講座 最新版(2000年3月3日掲載記事)



第168回 クロード・シャノン博士死去


解説イメージ

私の研究分野は「マルチメディア通信工学」であると言っています。 中でも大学生のときからその中心として学習、研究を続けてきたの が、「情報理論(Information Theory)」という基礎理論です。それ は「情報」を数学的に評価する、現在のコンピューターや通信の基 となる重要な理論体系です。私にとってITと言えば、この情報理論 を指しています。

この情報理論の創始者であるクロード・シャノン(C.E.Shannon)博士 が、先週の土曜日に亡くなられました。84歳でした。シャノンと 聞いてもほとんど人が知らないと思います。しかし、彼が現在のIT (情報通信技術)社会のルーツであり、コンピューターや通信の世 界では、ニュートンやアインシュタインに匹敵する人物なのです。 いわゆる0と1を扱う「デジタル」という発想は彼のアイデアに基 づくのです。彼の業績なしにインターネットはおろか、CDやDVD、衛 星放送、ありとあらゆるデジタルに関係するものは形作られなかっ たでしょう。

「情報」という漠然とした概念に数学的な考えを取り入れて、その 性質を始めて明らかにした人がシャノンです。それゆえ、情報とい う言葉がつく学問や技術の祖として崇められているのです。1948年 に「通信の数学的理論」という論文を表し、そのなかで情報は確率 で定義されること、そしてすべての情報はビット、すなわち0と1 で表現できることを示しました。このことによって情報というもの を科学的に扱えるようになったのです。その発展はデジタル情報の 伝送、蓄積、処理を可能にしました。彼の理論は、伝送としてはイ ンターネットの隆盛を、蓄積としてはCDやDVDを、処理としてはコン ピューターグラフィックスを可能としたのです。また、シャノンは 無条件に安全な暗号を定義し、その存在を明らかにしました。彼は 数学を用いて、理論的に暗号を取り扱い、以後の暗号研究に大きな 影響を与えました。デジタル情報すべてにわたる理論的基盤は彼の 業績によるのです。詳細は彼が最も輝いていた時期の所属であった、 アメリカのベル研究所のホームページに記載されています。

http://www.bell-labs.com/news/2001/february/26/1.html


前回掲載記事はこちら
次回掲載記事はこちら

森井教授のインターネット講座ホームページ