森井教授のインターネット講座 最新版(2000年5月28日掲載記事)



第176回 ネット犯罪


解説イメージ

先日、徳島県警察本部のハイテク犯罪室が中心となって佐賀市内の 自宅のコンピューターや海外のサーバに市販のゲームソフトを不正 に置き、自分のホームページから一般のユーザにダウンロードさせ ていた男性を著作権法違反の容疑で逮捕しました。そのゲームソフ トの著作権を持つ会社は再三にわたって警告を出していましたが、 結局無視する形となり、法的な執行となりました。おそらく男性は 大きな罪の意識がなく、犯行を積み重ねる結果となったのでしょう。 著作権を無視するということは、その著作権を有する企業あるいは 作者の人権や存在そのものを侵す重大な罪であるということを認識 しなければなりません。インターネットやその周辺技術の出現以前 は広い範囲で著作権を犯すようなことは一般の人にとって非常に難 しいことでした。しかし、現在では容易に行うことができます。罪 の意識がなくとも結果として著作権を大きく侵している場合もある のです。IT革命と言われる現在、文字通り革命に伴った法的整備と、 さらに新しい倫理観を身につけることが必要となってきています。

最近、出会い系サイトを仲介とした犯罪が多発しています。これは 主に携帯電話の電子メール機能を利用して、見ず知らずの者が連絡 を取り合うきっかけを演出するものです。テレホンクラブ等、この ようなシステム自体は古くからあり、インターネットや携帯電話を 利用することによって、より身近になってきたのです。言わば、今 まで一般の人がそのようなシステムになかなか接することができな かったわけですが、システムの方から駆け足で近づいてきたのです。 危険なものに近づかないという消極的な対策から、危険なものを回 避するという積極的な対策をとるべき時代になったといえるのです。

ネット犯罪自体が一般の人に駆け足で近いづいて来ています。これ からは誰でもがネット犯罪から肩を叩かれることを肝に命じるべき でしょう。メールでの言葉巧みな「ねずみ講」の勧誘、インター ネットを使った不法薬物販売、インターネットでの販売やオークシ ョンでの詐欺等、枚挙にいとまがありません。実社会において、自 分の一つ一つの行動に、「これは違法、これは合法」と意識するこ となく法を遵守していることと同様、インターネットの世界でも、 意識することなく法を遵守し、秩序に沿った利用をするためにも、 新しい倫理観、つまり情報通信倫理とも言える概念を身に付けるこ とが求められています。最後に冒頭のホームページでのゲームソフ トの不正な公開ですが、アクセス(ソフトのダウンロード)が数ヶ 月間で145万件以上もあったそうです。ダウンロードした側にも 著作権侵害の罪を犯していることを自覚すべきなのです。


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