森井教授のインターネット講座 最新版(2000年6月18日掲載記事)



第178回 自動車とインターネット(下)


解説イメージ

前回、ITSと呼ばれる「高度道路交通システム」について解説しま した。その中でETCと呼ばれる「有料道路自動料金収受システム」 が実用化されていることを紹介しました。将来的には、自動車の自 動走行を可能にしょうとしています。つまり行き先を自動車に告げ るだけで、自動車が自律的に最適な道順を探し出し、その道に沿っ て自動運転し、目的地にたどり着くのです。この目的を達成するた めには、大きく分けて、最適な道順を探す技術と、その道に沿って 安全に走行する技術が必要です。前者は、すでにカーナビゲーショ ンシステムが実用化されており、道路渋滞情報を通信によって得る ことができれば、容易に最適な道順を得ることができます。後者に ついても実験がすでに行われています。自動操縦を行う自動車の運 転制御装置と、道路の状況や他の車の位置や速度、目的地の情報を 処理するコンピューターを無線通信で結び、安全に走行するシステム です。自動車を「機械」としてとらえている人も多いようですが、 現在の車は、「走るコンピューター」と言っても良いのです。複数 の高性能なマイクロコンピューターが搭載され、そのマイクロコン ピューターが機械を動かしているのです。したがって、そのコンピ ューターをもう少し強化し、かつ無線通信技術を導入すれば、自動 走行も夢ではないのです。

その「走るコンピューター」である自動車ですが、文字通りコンピ ューターであることを利用して、インターネットの端末として利用 しようという実験が行われています。自動車は走ることによって、 様々な情報を得ることができます。直接的に、カメラやマイク、そ れに降雨センサー等を搭載することによって、移動している場所、 特に道路の情報を得ることができます。しかし、特別なセンサーを 置かなくとも、多くの情報を得ることが可能なのです。どこを走っ ているかと言うことはカーナビゲーションシステムと連動させれば 簡単にわかります。速度もわかります。どの道路をどれぐらいの速 度で走っているかと言う情報から、その道路の渋滞状況がわかりま す。ワイパーの利用状況によって雨の強さもわかります。エアコン と連動させれば温度や湿度もわかるのです。つまり「走るコンピュ ーター」は「走るセンサー」にもなって、各地のいろいろな情報を もたらしてくれるのです。実験では、数千台の自動車に無線通信装 置を付けて、インターネットと接続し、各地の情報を集め、道路や 気象情報等に利用することが考えられています。

今までは、道路の状況や気象情報を得ようとすれば、衛星からの超 高精彩画像撮影をリアルタイムで行わない限り、その地点にセンサ ーを設置するということが常識でした。インターネットによって常 識が代わろうとしているひとつの例です。


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