森井教授のインターネット講座 最新版(2000年7月2日掲載記事)



第179回 インターネット選挙


解説イメージ

今年は選挙の年であり、徳島市長選に始まって、参議院議員選、徳 島知事選と大きな選挙が続きます。選挙の際、よく見かける光景は、 その候補者の信条、公約等を述べる演説会と電話による投票依頼で す。しかし,投票者が候補者を選択する際に、どの候補者がどのよ うな公約を掲げているか、過去の実績等を調べようとしても選挙広 報や演説会等を見ない限りは難しいのが実情です。ここで思いつく ことが、ホームページの活用です。ホームページは容易に情報発信 を行い、また誰でもが容易に情報を得ることができるツールです。 このホームページに候補者の情報を詳しく掲載するのです。今では 誰でも思いつくことですが、これは公職選挙法に違反する行為とな っています。公職選挙法の規定では、文書図画を不特定または多数 の人に発信する行為は違反とされているのです。ホームページの文 字や図面が文書図画に相当すると解釈されているのです。当然iモ ードやLモードの利用や電子メールの利用も禁止されています。公 職選挙法が現在のIT社会を想定していないことから、いろいろな矛 盾が生じているのです。

現在の選挙は紙を主体にした情報伝達とせいぜいテレビとラジオ、 それに電話と言う一世代前の通信技術の上で行われています。しか し選挙でのインターネット利用の最も進んだ形である、「電子投票」 がその実施に向けて議論されています。自宅から、あるいは出先 からインターネット端末である、パソコンや携帯電話を使って簡単 に投票できる仕組みです。飛行機のチケットの購入やオークション (競売)までインターネットでできる時代ですから、すぐに電子投 票も実現できそうです。しかし実際に実施するにあたっては、主に 次の大きな3つの課題があります。まず、投票者の本人確認です。 投票権を有する本人以外が投票してはいけません。本人以外が投票 できない仕組みを作らなければならないのです。次に匿名性です。 現在の投票の仕組みでも誰が誰に投票したかがわからないようにな っています。インターネットでも投票者が誰に投票したかを知られ ないようにする必要があるのです。これはプロバイダだけでなく、 票を数える人にもわからないようにしなけれなりません。本人確認 と匿名性を同時に満たす方法は、「マジックプロトコル(魔法の通 信方法)」と称される暗号技術を使って実現できます。最後は安全 性です。二重投票を防いだり、投票したにもかかわらず集票されな いようなことが決してあってはなりません。この投票システムは常 に安定して稼動しなければならないのです。

まだまだホームページや電子メールでさえ選挙には十分利用できな いわけですが、電子投票は規模の小さい地方選挙でまず試験実施し ようという動きがあります。インターネットによる選挙活動や電子 投票は、多大な人や資源を使う現在の選挙に比較して、極めて環境 にやさしい選挙が可能になるのです。


前回掲載記事はこちら
次回掲載記事はこちら

森井教授のインターネット講座ホームページ