森井教授のインターネット講座 最新版(2002年6月10日掲載記事)



第207回 個人情報の危険度(下)


解説イメージ

最近、インターネットを通しての個人情報の流出が話題になってい ます。5月末には、エステティックサロン大手のTBCの個人データが インターネット上で閲覧できることがわかり、3万8000人もの氏名や 住所、電話番号等のデータが流出しました。このニュースが大きく、 新聞やテレビ等で取り上げられると、次から次にと個人情報流出の 事実が明らかになりました。全日空や日本テレビの関連会社、それ に岩手県のホームページ(HP)から顧客や市民の個人情報が流出し、 相当期間、誰でもが閲覧できるようになっていたのです。そして、 先週には、長野県諏訪市が管理する「原田泰治美術館」のHPから、 来館者等の約6700人分の住所や名前などの個人情報が流出して いたことがわかりました。

実は最近になって、個人情報の流出が行われるようになったのでは なく、以前から少なくない数の企業や組織から、それらの有する個 人情報等が流出していたのです。今回は、前回に取り上げました「 個人情報保護法案」の審議もあって、その一端が注目されただけな のです。

個人情報の流出は、その企業および組織のセキュリティ意識、しい ては管理能力の低さを示すものです。流出したデータの主体である 個人にとって大きな損害であることはもちろんですが、個人情報は、 その企業や組織にとって大きな価値のある財産です。これをいとも 簡単に流出させてしまうということでは、企業や組織の経営能力を 問われる結果になっても仕方がありません。最も問題視されなけれ ばならないことは、個人情報の流出が行われていたことに、その企 業や組織が気付かず、かなりの時間が経ってから、第三者からの通 報で発見することです。さらにその流出の事実すら公表せず、その 場の対策しかとらない企業や組織もあります。危機管理能力がまっ たく欠如していると言わざる得ません。自治体関係での個人情報流 出は、特に市民の利益を守ることに反し、大きな裏切り行為となり ます。3年前に京都府宇治市において、住民基本台帳に掲載されてい る個人情報の流出が明らかになりました。宇治市では住民側からの 慰謝料請求の裁判が起こされ、原告側一人あたり、1万5000円の慰謝 料の支払いという判決が下されています。まもなく住民基本台帳ネ ットワークシステム(住基ネット)が全国的に稼動し、ネットワー ク上で国民普く個人情報がやり取りされることになります。もし、 徳島県のセキュリティ意識が十分でなければ、個人情報流出が起こ らないとは言えず、その場合、県民に対して、150億円の慰謝料 を払わなければならない可能性もあるのです。


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