森井教授のインターネット講座 最新版(2002年8月5日掲載記事)



第213回 通信障害


解説イメージ

2002年7月、大阪で15日と29日の2回にわたって通信障害が起こりました。 つまり、両日とも数時間にわたって電話がほとんどかからない状態 になったのです。百貨店等では、「お中元」の問い合わせ時期で あり、それまでひっきりなしにかかっていた電話が急になくなり、 大きな損害を被りました。また旅行やイベントのチケット予約セン ターでも同様であり、やはり被害を被っています。通信障害は、設 備の不備、管理運用における人為的ミス等、いろいろな原因で起こ ります。特に予想しないほどの通話が要求されたとき、電話のシス テムは処理不能になり、電話がかからなくなってしまいます。これ を専門用語で「輻輳(ふくそう)」と言います。電話は、交換機と 呼ばれる機械が、電話機と電話機を結んでいます。この交換機が一 度に処理できる通話の量、すなわち同時につながる電話回線の数に は上限があります。この上限を超えると通話が出来なくなってしま うのです。一つの交換機が、何万台という電話の世話のしているの ですが、この上限値は世話をしている総数の1/10もないのです。よ って、多くの人が電話をかけようとする、災害時や大晦日の日等に は電話がかかりにくくなるのです。深夜料金に変わる時間帯に長距 離電話をして、相手が通話中でないにもかかわらず、話中になって しまうことがあります。これは瞬間的に輻輳が起こって、交換機が 電話をつなげなくなっているのです。通常、このような輻輳が起こ ったとき、その対策があらかじめ考えられていて、直ぐに復旧する ようになっています。しかし、災害時などのように、大多数の人が 電話を同時にかけようとし、しかも長時間にわたる場合は復旧でき ず、逆に通信制限をして、電話がかからないようにします。これは 他の地域の交換機への影響を防ぐ処置でもあります。

先月の大阪での通信障害は災害などではなく、「ワン切り」と呼ば れる行為を、社会的倫理観に欠ける業者が行ったためです。ワン切 りとは、通常、無作為に選んだ携帯電話に、1回だけ呼び出し音を 鳴らす行為です。相手の携帯電話には、業者の電話番号が表示され、 かけ直した際に、アダルトサイト等の有料サイトにつながって、利 用を促すようになっています。今までは通話が少ない深夜等に呼び 出しをかけてましたが、業者も過当競争になり、輻輳が起こる昼間 の時間帯にも呼び出しをかけるようになり、今回のような通信障害 の原因を作りました。通信における社会的、企業的倫理観がさらに 求められる時代です。


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