森井教授のインターネット講座 最新版(2002年9月2日掲載記事)



第215回 P2P


解説イメージ

P2Pは「ピアツーピア(peer to peer)」と読みます。ピア(peer)と は同僚という意味であり、P2Pは同じ目的を持った個人から個人へ という意味に解せられます。インターネットの世界では、個々のコ ンピューターが、それぞれ独立にそして対向で、通信や様々なサー ビスを授受することを意味します。現在、インターネット上で行わ れている、ほとんどのサービスがクライアントサーバ型と呼ばれる 形式です。つまり、サーバと呼ばれるサービスを取り仕切るコンピ ューターがあって、ユーザ(クライアント)がサービスを受ける場 合、かならずサーバに問い合わせ(アクセス)をするシステムです。 たとえば、オークションの場合、売り手と買い手との交渉ですが、 かならずそのサービスを提供しているサーバに双方がアクセスして 交渉するのです。対して、P2Pでは、サーバを介せずに直接、通信 を行う方式です。これは一般に流通しているコンピューター、すな わちパソコンが高性能になり、さらにADSL等の高速な常時接続が一 般的になったことによります。サーバによるサービスの場合、管理 が容易であるという大きな利点を有してますが、セキュリティを含 めてサーバにすべてが集中するという欠点を有しています。サーバ が故障した場合、すべてのユーザが利用できなくなるのです。また、 サーバのセキュリティが甘いとすべてのユーザの個人情報が漏洩し てしまう可能性もあります。もともとインターネットはサーバによ る集中管理ではなく、P2Pのような分散管理に基づいて設計されてい ます。今後は個人のパソコンがそれぞれサーバの役目を果たし、従 来のサーバは、それぞれのサーバ(パソコン)が何をしているとい う案内(検索)の役目を担うのみとなるでしょう。

今後さらに注目されるP2Pですが、現在、次の2つの応用で注目され ています。一つはファイル交換です。自分がほしいファイルを探し 出し、直接、そのファイルの所有者のパソコンにアクセスして、フ ァイルをダウンロードする方式です。これは、ネットワークの主目 的の一つである、情報共有を効率的に実現する方法です。しかし、 このサービスは、著作物を違法に交換することを容易するというこ とで、問題になっています。もう一つは超高性能な分散処理コンピ ューターの実現です。数万台以上のパソコンをインターネットで接 続し、それぞれのパソコンが連携し合って、大規模な計算を行うの です。1台数十億円以上するようなスーパーコンピューターよりも 高性能なコンピューターが、すでに利用されているパソコンの空き 時間、すなわち何も計算していない時間を利用することによって実 現できるのです。実際、このようなシステムは宇宙からの電波の解 析や暗号解読に利用されています。


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