森井教授のインターネット講座 最新版(2002年9月23日掲載記事)
第216回 青空文庫
前回、P2P(ピアツーピア)で多数のパソコンをインターネットで
接続することによって、従来のスーパーコンピューター以上の性能
を有する計算システムが構築できることを紹介しました。これを
グリッドコンピューティングと呼んで、最近、盛んに研究が行われ
ています。このように、インターネットは世界中に散らばる資源を
有効に利用するためのネットワークとなっているのです。グリッド
コンピューティングは主にパソコンの計算能力やメモリ、そして
ハードディスク等のストレッジ(データ蓄積媒体)を統合すること
を目的としてます。直接的にパソコンの能力の統合を目的にするの
ではなく、人の能力や手間をインターネットで統合するシステムも
従来から盛んに利用されています。インターネットは世界中に散ら
ばった人という資源を結び合わせて、一人一人の小さな力や能力を
束ね、大きな力や能力とすることによって、大きな仕事を成し遂げ
ることに利用されます。このようなネットワークのことを、協調分
散ネットワークと呼ばれます。多くの人が協力して、仕事を少しづ
つ分担し、大きな仕事を成し遂げるのです。その一例が青空文庫
http://www.aozora.gr.jp/ です。青空文庫というのは、基本的に
作者の没後50年を過ぎて、その著作権が消滅した文学作品をイン
ターネットを利用して、無料で公開しています。芥川龍之介や海野
十三等の作品が無料で読めるのです。現在、1800以上の著作が
閲覧可能です。海野十三だけでも、38もの作品が無料で読めるの
です。この青空文庫を支えているのが、これらの作品をパソコンに
入力する人たちです。現在、300人以上の人がボランティアで、
これらの作品の入力や校正を行っています。誰でも画ボランティア
に志願することが可能であり、一人一人が一つづつの作品、あるい
は大勢で一つの作品を入力することによって、作品を電子化してい
ます。そうして集まった作品を単に無料で読めるだけでなく、電子
化されたデータを利用することによって、作品の統計分析や文書処
理等への応用に用いられ、国語の発展に寄与しているのです。皆さ
んも、日本の文学を後世へ電子的に残すために、在宅でボランティ
アをしてみませんか。
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