森井教授のインターネット講座 最新版(2002年10月14日掲載記事)



第219回 グーパス


解説イメージ

インターネットを使える装置の大本命は携帯電話です。携帯電話で インターネットを利用するi(アイ)モードのサービス開始が1999 年2月でした。当時、私はiモードに対しては否定的でした。つまり、 メールはポケベルの例もあり、一般の人に浸透する可能性は十分と 考えてましたが、キーや画面が小さいこともあって、画像まで取り 扱うインターネットの端末とはなり得ないであろうと考えていまし た。3年半経った今、ほとんどの携帯電話がインターネット対応で あり、インターネットという言葉を意識することなく、携帯電話で インターネットを利用しています。

インターネットは、「いつでも、どこでも、誰とでも」を実現する ユビキタス環境の基を成す技術と考えられています。携帯電話で利 用するインターネットは、機能を絞って、特にこのユビキタス環境 を実現することに集中したのです。パソコンで使うインターネット のように高品質な動画や音楽を楽しむことはできないのですが、情 報を共有するというインターネットの一つの大きな目的は達成でき るのです。つまり、いつでもどこでも知りたい、調べたいと思った ときにすぐに、その情報が手に入るのです。

携帯電話を使ったインターネットでも、やはり自分から調べようと しない限り、情報は手に入りません。現在でも問題となっている迷惑 メールは、望まない情報を一方的に送られるものです。しかし、も し自分の望む情報が、いちいち操作することなく自動的に送られてく れば、これほど便利なものはありません。つまり、情報のナビゲータ ー(道案内人)になってくれることです。このように、サービス側か ら情報を伝える方法をプッシュ型と言います。プッシュ型の工夫すべ き点は、如何にしてその情報を欲している人だけにその情報を送るこ とができるかです。ひとつ間違えば迷惑メールになってしまうからで す。

昨年から今年にかけて、「グーパス」と呼ばれるプッシュ型の情報サ ービス実験が東京、神奈川の東京急行電鉄・東横線沿線で行われまし た。その仕組みは、東横線の定期を利用する乗降客に、あらかじめ携 帯電話のメールアドレスと年齢や趣味等の個人情報を登録してもらい、 駅の自動改札で定期を利用する毎にメールで情報が送られてくるもの です。自動改札を使うことによって、携帯電話の利用者が、いつどこ に、そしてどこへ向かっているかがわかるのです。ここから利用者が どのような情報を欲しているかを察して、情報を送るのです。例えば、 外食をしている通学帰りの学生には、美味しい夕食の店を教えたり、 お酒好きの会社員には、帰宅時に居酒屋を勧めたりします。少し興味 から逸れた情報でも、電車の待ち時間に送れば見てもらえる可能性が 随分と大きくなるのです。電車に乗る機会の少ない地方では、例えば スーパーマーケットやレンタルビデオ店等のカードと連動させること が可能です。携帯電話が「秘書」となる時代もそう遠くないでしょう。

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