バーコードの代わりに、無線ICタグという弱い電波を出して、その 電波の中に、いろいろな情報を書き込んで使うシステムを前回紹介 しました。バーコードでは、高々商品の名前や社名ぐらいしか書き 込めなかったのですが、無線ICタグでは、その何十倍、何百倍もの 情報を書き込むことができるのです。しかもバーコードではできな かった読み込み書き込みが同時にできるのです。たとえば、ある商 品がどこでどのように作られたかを無線ICタグに書き込むことがで きるだけでなく、いつどこの流通業者を経て来たかも記録でき、消 費者が必要な情報を誰でも得ることができるようになるのです。最 近では、高々0.4ミリ角でごく薄く、紙に埋め込むことができる 無線ICチップが開発されています。価格も大量に生産することによ ってバーコードを印刷するに近い価格まで下がる可能性も出てきま した。まだまだいろいろな物品の管理に使われているとは言い難い ですが、アメリカでの同時多発テロ以降、航空機での荷物管理に使 われるようになりました。つまり、旅行者の搭乗券と荷物にペアの 無線ICタグを貼り付け、荷物を預けた旅行者が実際に搭乗している か否かを確認してから、その旅行者の荷物を機内に運び入れるシス テムを導入しているのです。その他、医薬品に無線ICタグをつけて、 同時に服用してはいけない医薬品を自動的に教えたり、特異なアレ ルギー体質の人に、その食材や食品添加物の有無を知らせたりする ような実験が行われようとしています。将来的にはもっと私たちの 身近なところで有効に使われるようになるでしょう。たとえば、生 鮮食品に無線ICタグをつけて、冷蔵庫に入れておくと、冷蔵庫が無 線ICタグと通信して、賞味期限切れや食べ頃時期を冷蔵庫が教えて くれたり、冷蔵庫に入っている食品を基にして、どのような料理を 作ることができるかを教えてくれたりするのです。これで、冷蔵庫 の奥底に、賞味期限が切れた食品が干からびて張り付くことはなく なるでしょう。