森井教授のインターネット講座 最新版(2002年12月27日掲載記事)



第226回 今年を振り返って


解説イメージ

年末最後の講座は毎年、同じタイトルでその年のインターネットの 置かれている状況を振り返っています。すでにインターネットは生 活に密着した道具となっており、相手との交渉を可能にする電話や ファックスといった「通信」、そして様々な情報を得ることが出来 るテレビやラジオといった「放送」、新聞や雑誌等の「活字メディ ア」のそれぞれの一角に位置する重要な、そして広く受け入れられ ている特異な「社会」となっています。互いに情報を共有できると いう意味での社会なのです。特に、インターネットを介して既存の 社会生活を円滑に行えるようになりました。電車や飛行機の予約、 ホテルや旅館の予約が一般的になり、ネットショッピングを行う人 の数も急激に増えています。昨年から複数設立されたインターネッ トを窓口とする銀行も、その利率の高さ、振込み等の24時間窓口対 応が可能といった利便さから利用者も増えています。

今年の特色としては、ブロードバンドの定着と個人情報の漏洩に始 まるセキュリティの重要さの認識でしょう。ADSLやCATVと いった高速で、しかも常時接続のインターネットが個人で安価に利 用できるようになり、ほとんどのインターネット利用者がブロード バンドによるサービスを受けるようになったのです。ブロードバン ドになって大きく変わったことは、動画が扱えるようになったこと でしょう。インターネットでは音声や音楽を送ることと含めて、「 ストリーミング」と呼ばれています。インターネットはその普及が 始まった当時から、現在の放送と通信に取って代わると言われてい ました。ブロードバンドによってテレビやラジオのような放送はス トリーミングで可能になり、電話等の通信は、IP電話と呼ばれるイ ンターネット技術による電話が広まろうとしています。特にIP電 話は、電話の誕生以来約130年、携帯電話出現以上の革命的出来事と 言われています。昨年はコンピューターウイルスの猛威が問題とな りました。今年はそれに合わせて、インターネットから個人情報が 漏れる、あるいは盗まれる事件が大きく取り上げられました。その ほとんどの事件は、個人情報の管理の甘さが原因です。インターネ ットをさらに広く利用するためには、個人や組織を含めて、すべて の情報が扱えるようにならなければなりません。しかし、扱えると いっても、誰でもが扱えることを意味していません。その情報を扱 える権利を有する人だけに制限しなければならないのです。多種多 様な情報がインターネットに集まるにしたがって、その情報のコン トロールが必要になってきています。インターネットはその利用を 促進するという段階から、すでにセキュリティという防御手段を考 える段階なのです。


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