前回の原稿で、韓国のインターネット事情を書いたところ、偶然に も掲載と前後して、韓国でのインターネットが不通になり、大混乱 になってしまいました。原因はコンピューターウイルスによる大量 のデータ送信のようです。このコンピューターウイルスは韓国だけ でなく、世界中に向けて送られたわけですが、韓国の被害がとりわ けて大きかったようです。その理由のひとつには、オンラインゲー ムをはじめ、韓国でのインターネットの利用率の高さにあります。
その韓国で流行し、インターネットのブロードバンド化によって、 世界的にも流行しつつあるオンラインゲームは、大きく分けて、二 つのタイプのゲームに分類できます。対戦型シミュレーションゲーム( Online Simulation Game)と多人数参加型ロールプレイングゲーム( Massively Multi‐player Online RPG)です。前者は、将棋、囲碁、 トランプといった対戦型のゲームであり、従来、面と向かって行って いたゲームを通信によって、遠く離れた相手とあたかも目の前にい るように楽しめるのです。後者はゲームの主催者がひとつの世界を 仮想的につくり、その世界で役割を担うゲームです。ストーリーや 目的がある場合もあれば、実際の人間社会を模倣したサイバー社会 を仮想的につくり、その中で、友人を作ったり、喧嘩したり、学校 へ行ったり、会社を作ったり、結婚したりという社会生活を営むゲ ームもあります。多くの人が同時に参加することから、実際の社会 と同様、意思疎通や相互理解を伴うコミュニティを形成することに なります。実際の社会でも、学校や会社に所属するという社会活動 の他に、趣味で同好会等のサークル活動を求める傾向があります。 言わば、相互理解の基でのコミュニティを求めているのです。この コミュニティがネットワークゲームという名の下で形成される可能 性があるのです。
オンラインゲームでもコミュニティを形成することから、ウイルス や不正アクセスと同じような問題を抱えています。つまり、そのコ ミュニティを不正に乱す行為です。たとえば、ゲームの欠陥を利用 して、嫌がらせをする人を「チーズプレイヤー(cheese player)」と 呼んでいます。対戦型ゲームでわざとゲームを長時間中断したり、 コミュニティ内で相手に不快な思いをさせる発言や行為を行うので す。このようなチーズプレイヤーの存在はネットワークゲームの楽 しさを大きく損ないます。円滑に、しかも楽しくオンラインゲーム、 すなわちコミュニティを営むためには大きな問題なのです。広い意 味で、ウイルス等の対策と同様、セキュリティの問題です。